「できるだけ住宅ローンの繰り上げ返済をして早くローンを完済したい」と、思う人が多いのではないでしょうか。確かに繰り上げ返済の額が多ければ多いほど、利息がカットされ返済総額を減らすことができます。しかし、住宅ローンの繰り上げ返済のやり過ぎで家計が苦しくなることも。住宅ローンの繰り上げ返済の種類とメリット、繰り上げ返済する際の注意点を詳しく解説します。
住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月決まった返済額とは別に借入金の一部を返済することをいいます。多くの金融機関で、住宅ローンの繰り上げ返済は任意の額で返済できます。
住宅ローンの繰り上げ返済は、1回当たり数万円の手数料が必要になることが一般的でした。しかし、近年ではインターネットバンキングを利用すると、手数料0円、繰り上げ返済の最低金額も1円からという金融機関も出て来ました。手続きもインターネットで好きな時間に行えるところもあり、以前に比べて住宅ローンを抱えている人は、繰り上げ返済を積極的に行う傾向にあります。
住宅ローンの繰り上げ返済のメリット
繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。それぞれの特徴やメリットを詳しくご紹介します。
早く完済できる期間短縮型
毎月の返済額はそのままで、繰り上げ返済をして返済期間を短くすることを「期間短縮型」といいます。繰り上げ返済の額が多いほど、借入総額が減るため本来支払うべき利息を大幅にカットできる点がメリットです。たとえば、以下の条件で住宅ローンを組んだ人がいたとします。
返済方式:毎月の返済額が固定の元利均等方式
● 金利:固定金利3%
● 返済期間:35年
● 借入額:3000万円
この条件で返済総額を計算すると、約4,800万円。毎月の返済額は約11万5,000円です。ローンを開始してから5年後に500万円繰り上げ返済した場合、繰り上げ前と繰り上げ後では利息が約580万円軽減され、そのうえ返済期間も約8年短縮することができます。ただし、返済額は約11万5,000円のまま、ローン完済まで変わりません。
住宅ローンを予定期間よりも早く完済して、ローンのプレッシャーから解放されたい人におすすめの繰り上げ返済の方法です。
毎月の負担が減らせる返済額軽減型
繰り上げ返済をして毎月の返済額を少なくする方法を返済額軽減型といいます。期間短縮型と違い、返済期間は短縮されません。さきほど紹介した期間短縮型と同じ条件で住宅ローンを借りて繰り上げ返済をすると、毎月の返済額は約9万4000円となります。
期間短縮型と比べ、毎月の返済額が約2万円減額されるので、毎月の住宅ローンの負担額が軽減されることになります。ただし、利息の軽減額は約260万円程度で、期間短縮型の半分程度しか利息が減らないため、「期間短縮型」の繰り上げ返済方法よりは、返済総額は多くなります。
とはいえ、毎月のキャッシュフローを改善し、子供の教育費など、今後使いたい毎月の出費がある家庭にはおすすめの返済方法です。
住宅ローンの繰り上げ返済をする際の注意点
ローンは借金なので繰り上げ返済を行い、早期完済を目指す人は少なくありません。しかし、住宅ローンの繰り上げ返済が家計の負担になったり、場合によってはかえって損をすることもあります。住宅ローンの繰り上げ返済を行う際の注意点をいくつかご紹介します。
子供の教育費の増加が見込まれる
子供の進路にもよりますが、一般的に子供が中学生以上になると塾の月謝や部活など教育費がかさみ、家計の出費が増えてしまいます。特に私立の中学校に進学すると、学費が年間で数十万円以上かかるケースもあります。
そのため、今後教育費の増加が見込まれる夫婦は、無理な繰り上げ返済は控えたほうがよいでしょう。教育資金が不足して、教育ローンや奨学金を借りる羽目になるからです。借りるお金の額によりますが、一般的に教育ローンは住宅ローンよりも金利が高い傾向にあります。そのため、かえって返済総額が増えてしまう恐れがあるので注意が必要です。
リストラなど失業したときの生活費がなくなる
DINKsや単身者も、過度な繰り上げ返済はおすすめできません。リストラや病気などで失業したときの生活費に困る可能性があるからです。会社員は3~6ヶ月、自営業は半年から1年程度の生活費を手元に残しておきましょう。
また、貯蓄のほとんどを住宅ローンの繰り上げ返済に回したせいで、家族が病気になった際に治療費に困って金利の高いフリーローンを借りた人も実際にいます。
住宅ローン控除の節税効果が減る
住宅ローン控除の対象となる物件に住んでいる人は、繰り上げ返済は控えたほうがお得になる場合もあります。住宅ローン控除とは、毎年の住宅ローン残高の1%が10年間所得税から控除される制度のことです。(上限金額有り)
金利や返済プランにもよりますが、繰り上げ返済をすると節税の効果がなくなることもあります。住宅ローン控除が受けられる人は、繰り上げ返済の前にどちらがお得になるか試算をしてから行うことをおすすめします。
金利によっては約定返済で返済していくのがいい場合も
もし1%以下など、金利が低い場合には、団信(団体信用生命保険)の価値もなくなってしまうことから、繰り上げ返済ではなくそのまま約定返済で返していくのことをおすすめします。手元にある現金を投資費用とし、その分でお金を稼ぐことを考えても良いでしょう。
ただし、「お金を借りている」ということが嫌だと感じる場合もあるでしょうし、その場合にはどちらがいいのか、臨機応変に考えるようにしましょう。その際はFPなど専門家に相談することをおすすめします。
住宅ローンの繰り上げ返済は、返済総額や毎月の返済額が安くなるメリットがあります。しかし、早くローンを完済したいばかりに過度な繰り上げ返済を行って、家計が苦しくなっては意味がありません。繰り上げ返済を行う際は、家計の負担とならないよう注意しましょう。繰り上げ返済について、どちらが得か迷ってしまった際にはFPに相談してみてください。