変動金利が0.5%台前後で借りられるようになった住宅ローン。低金利時代が長く続いているので、もしかしてこれから徐々に金利が上がるのではないか。などという不安もあるのではないでしょうか?
勉強しようにも専門的な用語が多すぎて、理解できないまま放置してしまう金融の仕組み。
政府の政策や経済情勢などによる金利の動向を確認することも大切ですが、それよりももっと基本的な金利、「金融機関がご自身に適用した金利」を把握しておくことが大切です。
「ここは確認しておいた方がいい」という金利の仕組みを、変動する可能性の高い、変動金利を例にとってお伝えします。
変動金利の決まり方
住宅ローンの変動金利は、「短期プライムレート」が指標になります。
「短期プライムレート」は、金融機関が、企業に対し1年未満の短期で融資をする場合に適用する金利。それに1%を上乗せすると、住宅ローンの変動金利になります。ほとんどの金融機関が、短期プライムレートを2009年から1.475%に設定しているため、変動金利も2009年から2.475%が続いています。
この短期プライムレートを指標とした、変動金利2.475%は店頭金利と呼ばれるもので、皆さんが住宅ローンを借りる時に適用される金利ではありません。皆さんが借りる時に適用される金利は、実行金利と呼ばれ、以下のように決まります。
実行金利=店頭金利―優遇金利
店頭金利・優遇金利・実行金利とは
ここでは、先程の式に出てきた金利の種類について、家電を例にとってまとめてみます。
・店頭金利・・・基準金利ともいわれます。変動金利では、短期プライムレートを指標にして定めた金利。家電量販店で例えると、希望小売価格でしょうか。
・優遇金利・・・店頭金利から割り引く金利です。借りる人によって優遇金利は変わります。優遇金利は借りた時の条件が、完済までそのまま適用されます。家電量販店で例えると、値下げ額です。
・金利(実行金利)・・・店頭金利から優遇金利を引いた金利です。住宅ローンの返済額は、この金利に基づいて計算されます。家電量販店で例えると、販売価格です。
知っておいてほしいのは、優遇金利。優遇金利は、借りたときの条件がそのまま適用されます。
実行金利は、店頭金利から優遇金利を差し引いて算出されます。
店頭金利が2009年から2.475%で変わっていないのに、0.5%台前後で借りられるようになったのは、優遇金利が上がったからです。
「実行金利=店頭金利―優遇金利」で表すと、「2.475%-1.9%=0.575%」となります。
優遇金利は、借りる時期や借りる人、担保となる物件など、様々な条件によって決まります。
そして、金融機関の金利表にも、「完済まで店頭表示金利より年-〇.〇〇%」や「〇年目以降完済まで、その時点の店頭金利より年-〇.〇〇%」とあるように、借りた時の条件が、適用され続けます。
優遇金利は、借りた時点での条件を完済まで変わらずに適用できるのです。
優遇金利0.7%の条件で借りた人は、仮に店頭金利が0.4%上がって2.875%になったとすると、適用されるのは1.175%。
優遇金利1.9%の条件で借りた人は、仮に店頭金利が0.4%上がって2.875%になったとすると、適用されるのは0.975%。
となります。
先日も、世間では金利が下がったって言われているけれど、月々の返済額(※元金と利息の内訳)が変わっていない。という質問をいただきました。店頭金利が変わらず、優遇金利も借りた当時の条件が適用されているのですから、実行金利も変わらないのは当然のことなのですが、この点を誤解されている方も多い様です。
※変動金利に変動があると、返済額の元金分と利息分の割合は変わりますが、毎月の返済額は5年間は変わりません。
金利が上昇していきそうな雰囲気が漂っていますが、店頭金利は個人ではどうすることもできません。
もし金利上昇に備えて、何かしらの対策を打ちたいとお考えの方は、一度ご自身の優遇金利を確認し、低いようであれば、条件の良い金融機関への借り換え。高い条件で借りられているのであれば、暫くは様子を見るのか、固定金利への変更を検討してみるのもよいかもしれません。
いずれにしても、まずはご自身の優遇金利の条件を確認してみてはいかがでしょうか。
※借り換え時には、借り換え先金融機関に対し、事務手数料、登記費用、保証料などの費用が発生します。また既存金融機関に対し、一括返済手数料が発生します。
※条件によっては借り換えの効果がない場合もありますので、諸条件を確認した上で、ご判断ください。
※変動金利から固定金利に変える際には、優遇金利も変わることがありますので、諸条件を確認した上で、ご判断ください。