中古マンションを購入される方々から様々な質問をいただきます。中でも築年数の古い物件の場合は「マンションは何年ぐらいもつのか?」「建替えになる場合はどうすればよいのか?」という2つことをほとんどの方々がご質問なさいます。
そこで、今回はマンションの建替えについて、お話をいたします。また、マンションの寿命に関しては別途「マンション寿命編」に記しておりますので、そちらをご覧ください。
まず法律的なことに関しては、特に私が重要だと思うことだけをお話します。それは「建替えに関する決議」はそのマンションの区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要だと法律で決められていることです。
つまり100戸のマンションであれば80戸が賛成しないと建替えは出来ませんので、つまりは殆どの方が建替えたいと納得ができる条件でないと、建替えの話はなかなか進みません。
更に建替えが決まったとしても、引越しをしない方がいたり、内容で揉めたりすることもありますので、現実的には、ほぼ全員の賛成がないと建替えの実施は難しいのではないかと思います。
実際、建替え工事日が決まったにも拘らず、まだ揉め事が残っていて、3年以上経過してもそのままのマンションもあります。
これほど建替えが難しい理由のひとつは、過去の事例が少なく予測がしにくいところです。国土交通省の調査によると、建替え実施及び地方公共団体に建替え相談等の件数は令和2年4月1日時点で295件に止まり、国としてもまだまだ手探りの状態ではないかとの予想がつきます。
以下に、よく頂く質問をまとめてみました。
建替えに係る期間について
一般的に建替え完成までに係る期間は、協議が始まってから6年~10年と言われています。もちろんそれ以上かかることもあります。
費用について
個人で必要となる費用は、主に建替え負担金と、建替えている間の仮住まいの家賃や引越しにかかる費用です。
負担金の相場は1,000万円~3,000万円程度になることが多いようです。
都道府県などの自治体によっては、補助制度もありますが、ほとんどの費用は個人の負担となります。
住宅ローンの残債
既存の住宅ローンの残債は、もちろん残ります。
新たに負担金を住宅ローンで組むこともできますが、金融機関側の審査次第ですので、場合によっては融資を受けられない可能性もあります。
建替えに反対したが、建替えが決まった場合
売渡請求または買取り請求によって、組合に売却することが出来ます。
ですが、その価格の算出には様々な方法があり、紛争になることも多いようです。
個人負担なく建替える方法
現在の規模より、倍の大きさが建てられるようなマンションは、負担なく建替えられることもあります。(建て替え中の賃貸や引越し費用は個人負担になる可能性が高いです)
現在建替えが進んでいるマンションの殆どがこのパターンで進行しています。1年~2年仮住まいを我慢すれば、その後、住み慣れた場所で生まれ変わった新しいマンションに入居できる訳ですから話もまとまりやすいでしょう。
とは言え、その様なラッキーなケースは、ごく僅かです。法律が変わる可能性もあるので、なかなか巡り合えないのが現実です。
建替えが難しいマンション
前項とは真逆で、建替えると現在の3分の1や、半分になってしまうマンションもあります。既存不適格物件と言われますが、建築基準法が60年前と現在とでは大きく変わっており、これらの物件を建替える際には現行の法に従わなければいけません。結果、以前と同じ大きさのマンションを建てることができない場合もあります。
たまに低層住宅街の中に6階建程度の古いマンションが建つ光景を目にすることがありますが、その殆どが現在の法律では不適格とされる物件です。
負担金1,000万円だしても、50㎡の物件が20㎡になると言われたら、建替えに賛成する方は殆どいないでしょう。築年数が経過したマンションですが、それでも建替えが容易に進まない理由のひとつにはこのことがネックとなる場合があると言えます。
以上のようなことから、大きく建てられるマンションや、経済的に余裕がある方が多く住むマンション、住民の総意が一致し、現行の法制下でもクリアする。というように、あらゆる角度からの問題解決を得ることが出来たマンション。それはとても理想的な解決ですが、現実的にはそう順調に建替えの話がすすむことはないのではと思います。
事例が少ないことに加えて不確定要素も多い。となると、もはや建替えについては考え過ぎても仕方ないのではとも思えます。
ではどのような点に留意すれば良いのでしょうか。ここからはあくまでも私の個人的な意見ですが、なによりも先ず、分からないリスクをご自身が許容できるか否か」 を念頭に置くべきです。
許容できないのであれは、無理してまで購入するべきではありません。安心、納得できる別の物件を購入されるのが賢明です。
私自身は昨年、築44年の物件を購入しましたが、選択肢の基準として、立地や周辺環境、居住空間の方が築年数よりも重要で優先順位が高く、建替えや耐震など誰にも分からないリスクに関しては許容することが出来ました。
とは言え、もちろん、何も考えなかった訳ではありません。
許容できた理由は、あらゆる観点から熟考し、立地・建替え可能な大きさなどから問題ないと推察し判断出来たからです。
将来日本の人口が減ったとしても、住みたい人が多い立地であれば、建て変わらないことはないと思いますし、同程度の大きさのマンションに、建替えるのが可能な物件であるだろうと判断した訳です。
では同規模のマンションへの建替えが難しそうな物件は買うべきでは無いのかというと、それもまた判断が難しいところです。管理が良い物件なら建ってから60年・80年・100年と保たれる可能性も十分あります。これは予測というよりも願望ですが、将来的に国が何かしらの規制緩和をしてくれると良いと願っています。
例えば、建替えが社会問題になった時に、本来は大きさが2分の1になってしまうマンションでも、同規模までなら建替えても良い。というような規制緩和を国が行うことで、建替え促進を図るのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、将来のことは誰にも分かりません。様々な可能性、リスクがある中で、ご自身にとって何が重要で、何が許容できるのかを考えることが大切です。