「あなたの家を買いたい方がいらっしゃいます。」ご自宅に、そんなDMが届いたことはありませんか。
そこには、例えば、30代の3人家族が〇〇〇〇万円で購入を希望しているなど、具体的に、しかも相場と比べて高い購入希望金額が書かれている場合がほとんどです。私自身、自宅を購入してから2年ほど経ちますが、未だにそのようなDMが届きます。
たまたま自宅の売却を検討しているとしたら、思わず連絡してしまうかもしれません。実際、弊社でご自宅の売却相談を受ける際に、そのようなDMを参考資料としてお持ちになる方もいらっしゃいます。
実態はお分かりだと思いますが、これらのDMの99%は“ウソ”と言えるでしょう。
この行為は残念なことに、売却の契約が欲しい、多くの不動産業者がやっているのが現状です。試しにその業者に言ってみてください。「DMの方に、購入申込の上、内覧をして欲しいと、伝えていただけますか」と。いざ、こちらが契約を実現させようとすると、「その買主さんは他の物件を買ってしまった。」とか「急な転勤が決まり、購入をやめられた」などと、適当な理由をつけて、話はうやむやにすると思います。
本当に購入希望者がいるのであれば、相手の業者はすぐに行動を起こしてくれるはずです。そもそも、数千万円からの買物を、物件を実際に見ることもなく決める人など、まずいないと言ってよいでしょう。
私は、仕事をとるための“ウソ”は勿論ですが、相場よりも高い金額を安易に提示する行為そのものについても、同業者として非常に憤りを感じます。もちろん、売る側としては、1円でも高く売れた方が良いに決まっています。おいしい謳い文句につられてDMを額面通りに受け止めたくなる心情も当然でしょう。
その心情につけ込み、自分の利益のために、高い金額を提示する行為は、ともすれば、売主の売却機会を毀損して、利益を阻害する行為だと思っています。
残念なことに、これを違法として厳しく取り締まることが難しいのも事実です。
実際によくあることなのですが、高い金額を信じ、売却活動を始めたが、なかなか買い手が決まらず、結局価格を下げる事にしたものの、それでも決まらず、気がつけば売り出しから半年も経ってしまったのに未だに売れずにいる…。
このような物件に対し、買主側としても「半年間も買い手が決まらないのは、物件そのものに何か懸念する点があるのではないか?」と訝ってしまい、そのマイナスイメージにより、延いては、相場よりも安く売却する羽目に陥る可能性すらあるのです。
DMの甘言を鵜吞みにせず、ご自身で適正な価格さえ把握していれば、スムーズに適正価格で売却をすることができたかもしれません。
不動産は相対取引ですから、相場よりも高く売れることは、もちろんあります。ただ、何の理由もなく高く売れることは、まず無いことを知っておいて欲しいのです。高く売れるのにはもちろん確固たる理由があるのです。
それは他との差別化です。他に無いが、この物件には存在している。類似物件であっても、中古マンションは同じ物件は2つとありませんので、他と比べた時に魅力となるポイントが多い物件が高く売れるというだけの話です。
・類似物件が周辺に無い
・室内状態が良い(リノベーション)
・眺望良好
・日当たりが良い
・角部屋
・間取りの形が使いやすい
・オートロック
・宅配ボックス
・ペット可
もちろん個人の好みは十人十色ですが、立地条件はもちろんのこと、上記のような点を踏まえ、売却の際の参考にしてください。
世の中、うまい話には罠があります。
DMの高値に惑わされないでください。以外と一番低い査定金額を提示した会社が、結果的には一番高く売ってくれるかもしれません。