中古マンション購入術 長期修繕計画書編
「中古マンションは、管理の良い物件を買え」「マンションの管理=マンション寿命」「管理体制の良い物件=資産価値が高い」など、マンションの管理体制を重要視する記事が多くあります。
確かに重要なポイントですが、必要以上に気にしすぎてしまうと、購入の好機を見逃してしまうことにも成りかねません。ここでは、確認すべきポイントを整理しながら順を追ってお伝えしたいと思います。今回は特に、長期修繕計画書についてお話します。
長期修繕計画書とは、各々の分譲マンションの品質を維持すべく、経年劣化や老朽化に対して行う修繕、修復の工事計画を管理組合が書式化したものです。
長期修繕計画書は、基本的にマンションの管理会社経由で取得することが可能です。中には、作成をしていないマンションもありますが、書類を作成しているマンションであれば、購入前にぜひとも一読することをお勧めします。その際は、以下の点を留意してください。購入するか否かの決断材料の手掛かりのひとつになると思います。
①長期修繕計画書と外観を確認する
長期修繕計画書には、これから行う予定の工事内容や、工事に必要な概算費用などが記載されていますので、まずは大規模修繕工事が行われる時期を確認します。
現状、汚れの目立つ外観だとしても、近い将来、大規模な修繕工事の計画予定があれば、納得ができ、修繕後の美観に期待が持てます。
逆に大規模修繕工事からほんの数年しか経ってないのにも関わらず各所の汚れが目立つマンションもあります。一概には断言できませんが、マンションの外観や共有部などの汚れは判断基準のひとつになる得るかもしれません。
②長期修繕計画から今後の修繕積立金の値上げを想定する
修繕積立金の値上げは、毎月のランニングコストに直結します。
購入前に、どれくらい値上げの可能性があるのか、把握するようにしましょう。
作成している管理会社の書式によっても異なりますが、今後必要になる修繕積立金の総額と、現在の修繕積立金のまま積み立てられる総額をグラフで表示している長期修繕計画書もあります。
そのグラフを見れば、今の修繕積立金で今後の修繕費用がまかなえるか確認が出来ますし、足りない場合は、どれくらい値上げするのか、予測をすることが可能です。
仮に総戸数50戸のマンションが、残りの期間30年の長期修繕計画で15,000万円足りない場合ですと、1月で足りない金額は、15,000万円÷30年÷12=約416,000円
おおまかな計算で良ければ416,000÷総戸数(50戸)で8,320円位は値上げの可能性があることが分かります。
もっと細かく知りたいという方は416,000円を登記簿謄本に記載されている持分割合で割り戻せば計算できます。
長期修繕計画にグラフがない場合でも、少々面倒ではありますが、必要な修繕費の総額と1年間に貯まる修繕積立金が分かれば、、同様に計算することが可能です。
③調査報告書との差異を確認する
管理会社が発行する書類には調査報告書という書類もあります。調査報告書には修繕積立金の総額とこれまでの修繕履歴が記載されているので、できれば長期修繕計画書と併せて調査報告書のこれらの項目を確認することをお勧めします。
長期修繕計画書は、あくまでも計画なので、現実的には計画通りに行っていないことのほうが多いようです。そのため調査報告書に記載されている修繕履歴、積立金の総額を、長期修繕計画書と併せて確認することが重要であるという訳です。
長期修繕計画書の予定積立額と、調査報告書の金額がほぼ同額で、工事内容も則した内容であれば、概ね予定通りに修繕工事が成されていることが分かります。
万一、組合で借入があり、現在の積立金の総額がマイナスであったとしても、長期修繕計画の想定内であれば、今後改善されるので安心材料となり得るでしょう。
逆に計画上ずっとマイナスが続いているのにも関わらず、修繕積立金の値上げの話が出ていないなどの場合は、現状、綺麗でも今後の管理に不安材料を残すこととなり、いずれは修繕積立金の値上げの可能性も高くなります。
また計画と現状の積立総額や修繕内容が全く異なる場合には、管理会社に理由を確認するようにしてください。
長期修繕計画書で、多くのことが分かる訳ではありませんが、現状と計画の比較をすることで、今後の予測をすることができます。
特に修繕積立金の値上げは、日々の生活に直結しますので、どの程度値上げの可能性があるのか、把握しておくと安心して購入へと進んで行けると思います。