東京都の港区や渋谷区等は、土地が限られているため、新築マンション建築戸数が少なく、流通している中古マンションは約半数が旧耐震(昭和56年6月1日よりも前に建築確認を取得)物件と言われています。
弊社では、オフィス最寄り駅が外苑前にある事もあって、上記エリアで旧耐震や、それ以前の旧々耐震物件ご案内する機会も多く、弊社が入っているオフィス自体も昭和45年に建てられたヴィンテージマンションです。
弊社に相談に来るお客様から、「このマンションは古そうだけど、良いマンションですよね。」という話から、自然とマンションの管理や、建替え、寿命の話になることも多いので、今回はマンションの寿命について、私なりの考えをお話したいと思います。
まず大前提ですが、「正確な答えは誰にも分かりません。」
専門家でも意見が別れるところですし、居住用の日本最古の鉄筋コンクリート造は1916年に建てられた「軍艦島」で築104年です。
まだ100年の歴史しかなく、軍艦島は既に廃墟。それだけで100年は維持できないと言えるのか??軍艦島は1974年に閉山してからは管理もされていませんでしたし、管理がされていれば維持できたのか。
考えてみても分かりませんね。
では、専門家はどんな見解なのでしょうか?
国土交通省が平成25年にまとめた、コンクリートの寿命についての研究例があります。
4つ研究例がありますので、下記に記載いたします。
①コンクリート部材の損傷程度の実態調査
実態調査を行った結果、鉄筋コンクリート部材の耐久実態は50年以上あると認められた。
【根拠論文】篠崎徹・毛見虎雄・平賀友晃・中川 宗夫・三浦勇雄(1974)「約50年を経 過した鉄筋コンクリート造の調査」 日本建築学会学術講演梗概集
②鉄筋コンクリート造 建物の減耗度調査に基づく物理的寿命の推定
実際の建物の減耗度調査のうえ、建物の減耗度と実際の使用年数との 関係から、鉄筋コンクリ-ト造建物の物理的寿命を117年と推定。
【根拠論文】飯塚裕(1979)「建築の維持管理」 鹿島出版会
③構造体としての鉄筋コンクリートの効用持続年数
鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造の構造体の耐用年数は、 鉄筋を被覆するコンクリートの中性化速度から算定し中性化が終わった ときをもって効用持続年数が尽きるものと考える。鉄筋コンクリート部材 の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる。)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年。
【根拠論文】大蔵省主税局(1951)「固定資産の 耐用年数の算定方式」
④鉄筋コンクリート造の住宅・事務所等の平均寿命
固定資産台帳の滅失データを基に、区間残存率推計法を用いて、家屋 の平均寿命(残存率が50%となる期間)を推計した結果(2011年調査)、 RC系住宅は68年、RC系事務所は56年。
【根拠論文】小松幸夫(2013)「建物の平均寿命 実態調査」
う~ん。
50年以上、117年、120年、68年と、バラバラでよく分からないですね。
そこで個人的に注目したいのは④の「鉄筋コンクリート造の住宅・事務所等の平均寿命」です。これは、実際に建物が建替えとなるまでの期間として見る事が出来るので数字としては、現実的に思えます。
実際、都内で売買取引がされているマンションの中で古い物ですと昭和30年代前半です。築60年以上が経過していますし、60年以上が一つの目安になり、管理次第では100年以上が寿命になるのではと思っています。
100年という根拠も、もちろんあります。
居住用の日本最古は軍艦島ですが、日本最古の鉄筋コンクリート造は横浜にある1911年に建てられた「三井物産横浜ビル」なんです。
「KN日本大通ビル」と名称が変わりましたが、今も使用され続けています。
いかに管理が大切か分かる事例ですね。
「マンションは管理で買え」と言われる所以ではないでしょうか。